あまぐりちゃん

　昨年の秋、地域のフリマに出店したときのこと。相方にしていた当時小２の長男に、「おつかれさん。これで何か好きなもの買っておいで」と５０円渡したところ、しばらくして戻ってきた彼が手の中に大事そうに持っていたのが、この黄色いてるてる坊主のようなシロモノ。
　「？！何これ！こんなもの５０円で買ってきたの？！」とかなり蔑んでいた母でしたが、その後通る人通る人、みな彼の持ってる黄色いてるてるに目が釘付け。「これいくらですか？」と、私が苦労して仕上げた手作り品を素通りして欲しそ～な様子。
　「？ねえ、これって今流行ってるの？」と間抜け面で尋ねる母に、息子は「そうだよ。これ、あまぐりちゃんっていうんだよ。お母さん知らないの？とってもかわいくてみんなこれ好きなんだよ」と言うではありませんか。
　甘栗？フーン、確かにそう見えなくもないけど…。人間、周りの反応で変わります。だんだんすごくかわいい、貴重な物に見えてきた。「ねえねえ、１０００円ぐらいで売っちゃえば？」と入れ知恵する母に「そんなに高く売れる訳ないじゃん。それにこれは僕が買ったんだよ。５０円だったんだよ。すごいお買い得でしょ！」だんだん、息子もちょっとエラく見えてきた。
　母はいつのまにか、きっぱり時代から切り離されていたのでした。

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